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2017-07

近くて遠い隣人~【入院日誌】 - 2014.03.20 Thu

 初日は救命救急病棟に入院だった。
位置的には一般のナースステーション受付の反対側になり、病室の仕切りはあっても入り口はなく、
正面側は全て開放になっている。患者の様子が看護師や先生側から一見できるような配置である。
それだけに、ザワザワととてもうるさい。話し声、足音、機材を運ぶ音、他の患者のうめき声・・・

 一通りの検査が済むと転院をお願いすることになるかもしれません、と説明を受けた。
基本的に救急患者をすべて受け入れていることからベッド数が足りなくなるらしい。
私は出来るならここで見ていただき転院は極力ないことを祈り個室希望を出した。

 翌日、一般病棟へ移ることが決まった。個室はまだ空きがないため4人部屋になるという。
転院になるかどうかまだわからない状況だ。
お昼過ぎ病室の引っ越しとなった。引っ越しといっても、同じフロア内なので数十メートルだ。
ナースステーションを挟んで反対側に移っただけ。
大部屋の手前(廊下側)左が私のベッドになった。すでに他のベッドは全て埋まっている。
長期入院ではないから、他の人に挨拶することもなく自分のベッドに入った。
部屋は入り口から見ると手前両サイドと奥両サイドの4区画に仕切られている。
中央の通路奥正面に洗面化粧台が一台設置されている以外、トイレもシャワーもない。
隣との仕切りは上下が解放の薄い医療用コントラクトカーテン一枚である。

入院_カーテン

 このカーテンが遮断してくれるのは視界のみである。それも完全にではないシルエットは見えてしまう。
音や臭いは全く遮断してくれない。咳払いや話し声はもちろん、食事している音、寝息、おなら(笑)、
あくび、ため息、寝返りをした時のベッドのきしみ音、・・・すべて聞こえる。
そんなことに気を遣いながら過ごしていると精神的に疲れるので、みな周りのことは気にしていない様子。
 それぞれに顔を合わせることもなければ口を利くこともない。
1台しかない洗面台は、誰かが使用していればそうとわかるため、使い終わったことを察して次の人が使う。
私は、それが面倒だから洗面はエレベータ横の手洗いを使用した。
全くの他人で何の興味もない。しかし、入院中は暇を持て余す。そのためか、なぜか隣人が気になる。

 隣のSさんは、とにかくよく喋る。看護師や先生が来ると色々な質問をして長話をする。
そして納得がいかなければ、更に突っ込んだ質問をして困らせる。ある種のクレーマーだ。
更に、同じ質問を別な看護師にもする。そして答えが違うと、看護師の□△さんはこう言ってた、と
名指しで疑義を唱える。悪気はないのだろうけれども、周りは結構疲れそうだ。
毎日、奥さんが見舞いに来て長話をしているが、奥さんに対しては困らせる質問はしないようだ。
歳は多分60代後半、話し方からして現役時代は管理職にあったような気がする。
プライドが高く融通の利かない頑固おやじといったところ。
 はす向かいのDさんは、正直最後までよくわからなかった。年齢は70歳前後といったところ。
最初、誰もいないのか?と思うくらい人けを感じさせなかった。看護師の声掛けにも蚊が鳴くような
弱弱しい声だった。私と同じく急性膵炎で絶食治療をしているようだが、私よりも症状が悪いようだ。
3日目だったか面会人がやっと現れた。どうやら奥さんらしい。着替えを持ってきたとか言っていた。
1時間もしないうちに面会人は帰った。
 一番得体の知れない人物は向かいのIさん。多分私と同年代だろうか?
持病の肝炎があるが今は特に症状が出ていないらしい。数日前、腹痛があり膵炎が疑われ入院したらしい。
ようするにこの病室は膵臓の悪い人の集まり、グループになるようだ。
Iさんは入院後あらゆる検査をしたが膵臓は問題なく、他臓器についても問題がみつからなかった。
しかし、Iさんは先生の診察の度に「お腹が痛い」と言う。
「昨晩は痛くて一睡もできなかった」と言った。すると先生は
「どうして言ってくれないんですか?そういう時には直ぐに鎮痛剤を出しますから」と言った。
が・・・私にはIさんの言うことがにわかには信じがたい。
なぜなら、昨晩私が3回ほど目を覚ました時、寝息が聞こえていたからだ。
それに、日中は痛くないのか度々病室を出ていく。しかも何時間も帰ってこない。
様子からして上着を持って出ているので外出しているのではないか?と思われる。
Iさんは、普通のパジャマではなく黒っぽいジャージ系の服を着ているので外出しても気にならない。
お腹が痛い間は膵炎の可能性があるということで、私と同じく絶食治療をしていた。
私より二日早く入院しているため、絶食は5日間は続いていると思われるが、そのことはあまり
苦にならない様子だ。ひょっとしたら外出して何か食べていたのかもしれませんが・・・
度々外出して行方がわからなくなるので、何度か先生に注意されていました。
先生や看護師もIさんが何かおかしい・・ということは感じていたようです。
例えば、実際に鎮痛剤の筋肉注射をした後、痛みは直ぐにとれたようですが、翌日になっても
「昨日の注射がよう効いて、今日も痛くない」と先生に話していた。すると先生が、
「おかしいですね、薬はもうとっくに切れているはずだからまた痛みが出てもおかしくないんですが」
と言うと、「あっ、今日はお腹じゃなくて背中が痛いみたいです」と言い出す。
で結局湿布をすることになったが、湿布を貼りに来た看護師が「どの辺に貼りますか?」と聞くと、
「あぁ、どこでもいよ」と答える。普通、痛けりゃ場所を指定すると思うのだけれどね・・?
私より一日遅れでIさんも食事が開始された。つまりIさんは6日絶食していたのだろうか?
その日も日中外出していたIさんは、午後4時頃戻ってきた。
すると、ボリボリと音を立ててオカキらしきものを食べ始めた。
病室内におかきの醤油の香ばしい香りが立ち込めてきました。
病室内の全員、食事療法中で食べたいものを食べずに我慢しているのに、Iさんは今日で絶食解禁と
いうことをいいことに、これで隠れず食べられると勘違いしたのか、何の遠慮もなくおかきを食べ
始めたのだ。私以外の隣人もみな一様に驚いたに違いない。
その音や香りで直ぐにバレてしまい先生が飛んできた。
「Iさん何を食べているんですか?!病院食以外食べないように言ったはずです。ちゃんと言う
通りにしていただかないと責任は持てません。これは(お菓子)預からせていただきます」
と、叱られておかきを取り上げられた。
Iさんは先生と話すとき丁寧語とタメ後を混ぜて話す、少し常識に欠ける人。
結局、Iさんには一度も誰も面会に来る人はいなかった。

 退院の日の朝、トイレへ行った際廊下のベンチ椅子に座っているDさんらしき人と目があった。
お互いに、なんとなく同室の人だろうな・・と思う程度なので少し頭を下げるだけで声はかけない。
存在感のない人だったDさん・・・
しかし、よく考えてみれば私もまわりの3人からしてみれば存在感の薄いTさん、
と思われていたかもしれない。できるだけ息を殺してこの数日生活をしていたから。
Dさんは私に、退院よかったねと言っているようにも思えた。
私は、Dさんもあとちょっと頑張って、と心の中でつぶやいた。

 何も関係のない、自分の人生に何の影響もない人たち、それでも
この3人と同じ空間を共有して過ごすことになったのも何かの縁があったのだろう・・・
結局、個室希望を出してはいたものの個室に移れないままこの部屋で退院の日を迎えた。
退屈な時間を、人物分析をすることで少し埋めてくれた同室の人たち、
「ありがとう・・」と心の中で呟いて私は病室を後にした。
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● COMMENT ●

う~ん

同じ病室になったのも何かの縁なんでしょうが、同じ目的、価値観、趣味で集まった方々ではないので近寄りがたくなってしまいますね。
あまり絡んだりすると後々面倒な事にもなりかねないし・・・
自分が同じ立場であったとしても、あまり話はしないでしょう。

結構楽しい

人の人生や背景を勝手に想像するのは楽しいです。
これは口も利かない他人だからこそ感情移入なしで出来る楽しみ方です。
相手からすれば、同じように想像の対象なのでしょうけれど。


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tsutsui-s

Author:tsutsui-s
広島県在住。
複数の会社と店舗施設を経営。自分に出来ないことはない、という自信過剰ぎみの精神力を糧に、新しいものに挑戦し続ける中年です。

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