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2024-03

大規模土砂災害の問題点 - 2014.08.23 Sat

一昨日、仕事で広島市安佐北区へ行った。
ちょうど同時多発土砂災害の最も多かった安佐南区八木地区の向かい側に位置する場所だった。
大きな山には、幾本もの土石流が流れた後が山肌に茶色い筋を残していた。
テレビ画像で見ると平面的に見えていたが、実際にその様相を見ると、
とても高い位置から土石流が発生したことが確認され不気味さを感じた。

 救命医も多くが待機しているらしいが、土砂災害の犠牲者は地震などの犠牲者と異なり
殆どが即死状態であることから、いまだ救命処置をすることさえないという。
行方不明の方はまだまだ多いことから犠牲者の数はまだ増えそうだ。
亡くなられた方のご冥福を心よりお祈りいたします。

 実は娘婿の実家が正に被災現場の真っただ中にあり、土砂が流れ着いたとのことだ。
幸い大事に至らなくてよかったが、道路はまともに歩けないので生活には制限があるようだ。
3軒となりは1m以上土砂に埋まったらしい。
家の配置が少し異なるだけで、被災の状況もかなり異なるようだ。

 テレビでは今回の大規模土砂災害がなぜ起きたか?自治体の対応が問題なかったか?
過去の大規模土砂災害の教訓が生かされていないのではないか?
避難勧告の発令時間が遅すぎたのではないか?
そうした非難めいた話題ばかりだ。

 そんなことよりもいかに一刻も早く行方不明者を救出するか?ということと、インフラ復旧をして
被災者の通常の生活を取り戻すか?ということではないだろうか?
そうしたことを考えると、もっと大きな疑問点が浮かび上がる。

【救助・復旧作業の問題】

 復旧にあたるのは、警察、消防、自衛隊の約3000名。毎日各地から増員されているので
その数は増えているのは間違いない。ボランティアの方も日に日に増えているらしい。
それが多いか少ないか?という問題ではなく、作業そのもののあり方に疑問を感じる。
人海戦術しかない、ということで自衛隊を中心にスコップやつるはしで少しずつ土砂を取り除いている。
スコップで取り除く?といっても、土砂を1mほど移動するだけかバケツや土嚢に入れるだけなので、
この作業を繰り返しではらちがあかず焼石に水といった感じた。
実際、娘婿は友人宅の土砂の撤去をボランティアで行っているが、100人近くで作業しているのに
1日で一軒の家と敷地内の土砂を取り除いたのは10%程度しかないという。
土嚢に入れても、それをまたどこかに運ばなくてはならない。人海戦術は先が見えない作業だ。
だから、いずれどこかの時点で民間業者が大型重機を沢山投入して一気に撤去することになる。
しかし、災害直後はいつもこのスコップやつるはしで撤去する人海戦術の映像が写し出される。
映像的には人が人を助けるために必死に作業を進めているように見える。
実際に現場で作業をする人の疲労度は半端ないと思われる。
しかし、警察や消防や自衛隊はこれら作業をする専門家ではないということを忘れてはいけない。
レスキューの現場では活躍できるだろうけれども、土砂の撤去や崩壊した家屋の撤去は専門では
ないために、膨大な時間を要してしまうのだ。

 生命維持の山は72時間と言われる。つまり3日間だ。
4日経った今、テレビで見る限りまだ殆ど状況は改善されていない。
一方で民間事業者である中国電力などの対応はやはり早い。
土砂災害で倒壊した電柱を撤去し新たに建て替える作業はその日の午前中に始まり、
1箇所については数時間で作業を終わらせている。
レッカーで折れた電柱を撤去した後、専用の掘削ドリルで地中に穴をあけ、そこにコンクリート製の
電柱をレッカーで吊って立てる。仮の電柱なので速乾性のコンクリートなどで固定するのだろう。
いずれにしても撤去から埋設まで数時間・数名で作業を終える。
それがプロ、専門家の仕事である。

 ちょうど昨晩、私の家の近くの橋でアスファルトの舗装敷き直し工事があった。
交通量の少なくなる午後11時頃から半分の車線を止めての作業だった。
今朝、5時過ぎに起きて様子を見に行くと殆どの作業が終わって片付けをしていた。
幅約10m長さ約60mにわたってアスファルトが敷きなおされていた。
5時半には何事もなかったかのように全線開通して車が走っていた。
僅か6時間で60mもの距離のアスファルトを機械ではがしてそれを撤去し、そして新たに舗装する。
作業員は十数名で、それぞれ作業分担されていて手際よく動いている。
それがプロの仕事だ。

 土砂災害地域ではいまだに道路の土砂が完全に撤去されておらず、それが原因で重機も持ち込めないという。
被災当日夜はじめて自衛隊の大型重機が1台入ったがそれ以外暫く重機を見ることはなかった。
警察や消防は重機を持っていないから当然ないし、操作できる人も殆ど皆無だろう。
自衛隊にしても重機の操作の訓練はしていても、毎日重機を扱っているわけではないだろうから
ベテランはそう沢山いない。
空からの映像を見ても、殆ど重機が作業している様子はみられない。

 民間の土木や建築業者にお願いすれば、主要の生活道路の確保など丸1日あれば済んだだろう。
ショベルカーやブルドーザーで土砂を取り除いて待機しているダンプに積み込む。
土砂は一旦近くの学校のグランドなどに集める。夏休みなので問題はないだろう。
そうすれば、1箇所の作業を警備員を入れても10名以下で行える。
土砂の低い場所なら8時間の作業でも100mや200mは撤去できるはず。
それを同時に全ての道路で開始すれば、大型重機も入りやすくなり作業は一気にすすむ。
電柱の建て替えや水道管の修理も容易になりインフラが一気に改善される。

 72時間といえば、1日8時間作業を単位とすれば9日分もある。
土木や建築業者なら、戸建て住宅なら1日で解体撤去をしてしまうし、数回建てのビルでも
数日で終わらせることもできる。
そうした専門技術と専門機械を所有する民間業者へなぜ要請をしないのか?
人がスコップで作業している姿は、大変だろうなといつも思うが同時に腹立たしい。
人命救助ということになれば、民間に作業を依頼するのは規制もありむつかしいのだろう。
遅々として進まない土砂撤去を見ていると腹立たしい。
自治体は、原因究明の調査のために「現場維持」をしようとしているのだろうか?。

 【避難勧告の疑問】

 避難勧告が出た時間が土石流のあとの4時20分だった。
この避難勧告発令の時間が遅かったということが問題視されている。
市の担当職員が悲痛な面持ちで避難勧告の指示が遅かったことを謝罪する映像が何度も流れた。
しかし、そうだろうか?
では何時に避難勧告を出せばよかったというのだろうか?
土砂は見て分かるように、生活道路に沿って、また家と家の間を縫って流れている。
もし、そうした場所に人が居たとしたら殆ど助からなかっただろう。
そう考えれば、深夜であったことは不幸中の幸いだったと思う。
もし1時間前の3時過ぎに避難勧告が出ていたらどうだろうか?
避難をするために直ぐに屋外に出た人の殆どは土石流に巻き込まれたことは容易に想像できる。
また、避難準備のために衣服を着替え雨具を用意するため建物の1階に移動する人が多いだろう。
1階部分は土石流に飲み込まれ死の危険が極めて高い。
では2時間前の2時過ぎに避難勧告が出ていたらどうだろうか?
深夜就寝中の人に避難を命じても、服を着替え、雨具を用意し、避難場所を確認して屋外に
出るまでに相当の時間を要する。高齢者や子供もいるわけで、土砂降りの雨の中を
1時間以内に避難所へたどり着ける可能性は極めて低い。
となると多くの人はやはり土石流に飲まれてしまうことになる。
では3時間前の1時過ぎに避難勧告が出ていたらどうだろうか?
その時間は土砂災害警報が広島の全域に流された時間。
安佐南区八木地区は土砂災害指定地域にはまだ指定されていなかった地域だ。
広島の住宅は70%以上が山の法面を宅地造成して建てられている。
そのためその多くが土砂災害指定地域になっているが、午前1時過ぎにそうした地域も含めて
避難勧告を出すと、何十万人もの人が一斉に非難しなくてはならなくなる。
どこにそれだけの人が避難するのか?それを誰が誘導し指揮を取るのか?
今回の被災地だけではなくパニックになり大変な状況になるのは言うまでもない。
 
 被災地域は深夜になって雨足が強くなりはじめ、一気に豪雨となった。
それは気象台の現在のシステムでは予測できない雨の量だったという。
その状況下の中で避難勧告を出す適切な時間というのはなかったと思う。
むしろ、実際に出された4時20分が適切だったのかもしれないし、あるいは第2波の土石流が
その時間に起きたとするとそれも不適切だったのかもしれない。

 車で避難をしようとして車ごと流され亡くなったかたもいる、避難所で被災して亡くなった人もいる。
そうしたことを考えても一番良い避難の方法というのを考え直さなくてはいけない。
 家ごと流された家屋は数十軒に過ぎない。それは山に直接面した家屋で山と山の谷裾に立っている家だ。
実際に屋外へ避難しなくてはいけない人はこうした立地に住んでいる人のみである。
自分が住んでいる家がそれに相当するのかどうか?まずそれを知らなくてはいけないと思う。
 また映像を見ていると、跡形もない家と建物の形を残したまま流された家がある。
大きな岩石が直撃するとどんな家も持たないが、土砂だけなら構造的に丈夫な家は原型を留める。
実際に倒壊した家は一般的な在来工法の木造建築が多いように見えた。
軽量鉄骨造や2×4住宅は傾いても原型を残しているように思える。
低価格の建売住宅は木造の在来工法が殆どなので頑丈とは言い難い。
自分の家がどういう構造なのかも知ることが必要だ。
 多くの人は2階に避難して助かっている。
一番安全で早く非難できる場所、それは自分家の2階だ。
それもできるだけ狭い部屋で窓が少なく山側の反対に位置する部屋だ。
土石流が発生するのかしないのか?何時に発生するのか?そんなことは誰にもわからない。
結果論で避難勧告が遅すぎたなどと言ってはいけない。
まして屋外へ避難をさせてはならない。
屋外へ避難するのは山の谷合の付近3列目までくらいの家屋の人だけだろう。
その人たちも避難所ではなく、数軒下の家に避難させていただくのがベストだろう。

 テレビである専門家が言っていた。横への避難ではなく縦への避難が重要だと。
つまり、大雨に見舞われると土砂災害や浸水の危険が伴うが、それは全て地面に近い平面上
のことであるから、少しでも高い位置へ移動することが最善だという。
全く同感だ。自分の家がある立地条件を知り、構造を知り、避難する部屋を決めておく。
建物の補強ができれば行い、あるいは避難部屋だけでも潰れないように補強するなど、
自らが命を守る方法を取ることが大切ではないかと思う。

 15年前の大規模土砂災害の教訓が生かされていない、としきりに言うが、
どういう教訓なんだろう?
広島は狭い三角州にできた町だ。
この三角州の平地がどうやってできたか知っているはず。
時間と共に山を形成している岩石(おもに花こう岩)は風化していく。
そして砂状になっていき、それは雨によって低い部分に流されて(土砂や土石流)平野ができる。
広島の平野部はとても狭い。つまり今現在もこの自然の活動の最中であるということ。
そこを先に削り取り、平面を形成してもその上の部分は自然のサイクルで流れて落ちてくることは
変わらない。地球が活動し生きている以上それは誰にも止められない。
どういう教訓だったのだろう。
少なくとも土砂災害を引き起こさないということは自然に逆らうことでできない。
避難方法のあり方だろうか?
先にも述べたとおり、戦時下にあって今から敵機が来て空襲があるから避難しろ、というのと
訳が違って、見えないものを相手に適格な避難誘導なんて不可能だ。
宅地造成をやめさせて、危険地域の人を引っ越しさせればよかっただろうか?
そうなると殆どの人が広島に住めなくなる。
教訓を生かしたところで自然の驚異には勝てないということだ。
それよりも一人一人の意識が大切だと思う。
人は国や自治体がなんとかしてくれる、と思っている。
土砂災害警戒区域に指定されれば、その危険を取り除くために砂防ダムなどを作ってくれる
だろうなどと思っている人もいる。それはまずありえない。

 あえて今回のことを教訓として生かすなら、
どんな場所の人、どんな行動を取った人、どんな建物の人、が被災し命を落としたか?どんな条件の
人が助かったのか?そういうことを検証し、どうすれば自分の命を守れるか?を考えることだと思う。
それは、一律ではなく個々が違う条件に居るから違う答えがあると思う。
自治体も単に土砂災害指定地域の確定を急ぐというだけではなく、個々の家に対してそうした指導を
してくれるといいのではないかと思う。
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tsutsui-s

Author:tsutsui-s
広島県在住。
複数の会社と店舗施設を経営。自分に出来ないことはない、という自信過剰ぎみの精神力を糧に、新しいものに挑戦し続ける中年です。

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